シリーズ〈今月の1冊〉- 2025年4月『せかいのはてって どこですか?』
ここ長崎では、桜の開花を待つころを過ぎ、風に舞う桜を眺める季節となりました。あたたかく吹く風に舞う花びらを見て、季節がめぐることの美しさを感じています。
子どもたちは入園、入学、進級とそれぞれに新しい環境に飛び込んでいる毎日ですね。いろんなアンテナを張って、緊張している日々かもしれません。そんな時はお家で少しのんびりと。肩の力が少し抜けるような時間をつくれるといいですね。
さて今回は「今月の1冊」のご紹介です。
4月の配本のなかで1冊に決めるのをとても迷いましたが、こちらをご紹介いたします。『せかいのはてって どこですか?』「小さいみかんコース(およそ7~8才)」。
私が”かえる好き”というのもありますが、記事を書くにあたり改めて読み返してみると、かえるの姿と、成長していく娘の姿が重なり、胸がぐぅぅーっとなってしまいました。
まずは表紙を開いて…扉をめくると、タイトル横にも絵があり、その絵がなんともすてきです。そこには井戸の底から空を見上げるかえるの姿。この世界がこれからどう変わっていくのかとても興味をそそられるのです。
また、この絵本はカラー、モノクロ、カラー、モノクロと頁をめくるたびに変わります。その色の変化から受け取る印象の違いも味わっていただければと思います。
このかえるの世界は井戸のなかと見上げた空だけ。でもそこにはきれいなひんやりとした水があり、井戸のなかに飛び込んでくる虫もたくさんいたので、食べるものにも困りません。こけのベッドに眠り、毎日しあわせに過ごしていました。そんなかえるは「せかいとは、 いどのそこの 水たまりにある、こけのはえたいわのことに きまってるよ」という考えを持っていました。
しかしある日、井戸の底の水がすっかりなくなり、虫もこなくなってしまいました。
「ぼく まだ はねる力のあるうちに、せかいのはてをみておいたほうが いいんじゃないかな」と思いついたかえるは、ついに井戸の外へと向かうのです。
外の世界にでたかえるは、牛やブラックバードや森の動物たちと話をしながら、世界のはてを探してどんどん進んで行きます。そんなかえるですが、物語のラストでふと、自分の井戸のなかの世界に引き返すか、それとも先に進んでみるか、考え込んでしまいます。そこでのかえるの言葉をご紹介しておきます。
「ばかなかえるなら いどのそこに ひとりぼっちでいても しあわせになれるだろうけど、りこうなかえるだったら、ここにいて もっとしあわせになれるんだ」
未来を信じて、自分を信じて飛び込む場面に、今まさに伸びようとする娘の姿を重ねて、胸が熱くなってしまいました。
さて、かえるはどこにたどり着いたのでしょう?その答えはぜひ頁をめくってみてくださいね。
(担当:A)
『せかいのはてって どこですか?』
アルビン・トゥレッセルト/作
ロジャー・デュボアザン/絵
三木 卓/訳
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいみかんコース」(およそ7~8才)
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