父さんかえる日まで~まどのそとのそのまたむこう
先日、長く品切れだったモーリス・センダックの作品が、
新訳で復刊されました!
旧版の和訳タイトルは、「まどのそとのそのまたむこう」。
気になってはいたものの、読んだことがなかったので、
この機会に 軽く目を通しておこうかな〜、
くらいの気持ちで手に取ったら…
これは もしかして、すごい作品に出会ってしまったのでは⁈
と、久しぶりの 衝撃を 受けました。
「かいじゅうたちのいるところ」「まよなかのだいどころ」と並んで
センダックの三部作と 呼ばれ、
コルデコット賞も受賞している 絵本ですが、
ちょっとホラー感 漂う 独特の 世界観。
ストーリーは、少女アイダが、
お父さんが遠くに航海に行っている間、
ゴブリン(鬼?)に さらわれた
赤ちゃんの妹を 取り戻しに、
ホルンの音色に のって、夢とも現実とも つかない
冒険の旅へ 出かける、行きて帰りし物語。
・・・と言うと、「かいじゅうたちがいるところ」を 思い出しますが、
こちらは、お母さんのレインコートや お父さんの歌に
陰で支えられながらも、自力で 妹を守って帰ってくる、
少女の 精神的な自立を 描いているようにも 感じます。
いきなり 赤ちゃんとすり替わった
氷人形の 張りついた表情や、
赤ちゃんとの 結婚パーティのために
妹になりすます たくさんの ゴブリン群の
不気味さに ゾワゾワして、
これ、本当に 子どもに読ませても大丈夫かな??
と 思いますが、
何だか 強烈に 惹き付けられます。
ゴシック風に 描き込まれた絵からも 目が離せない!
不在ながら、要所で助けてくれる お父さんの 大きな愛情が
全体を 強く温かく 包み込んでいて、
作品の癖の強さを やわらげてくれています。
原題「outside over there」を「父さんがかえる日まで」
と訳した、新訳の訳者も、少女とお父さんの絆を
作品から 深く 感じたのかもしれません。
福島県の幼稚園に、旧和訳タイトル
「まどのそとのそのまたむこう」と 同名の
安藤忠雄さん設計の 絵本美術館が あるそうです。
3階の天井まで 壁いっぱいの本棚や、
全面の窓から 見える 海の風景など、
広く明るい 爽やかな印象。
(原則として、園児の不使用時の予約見学のみのようです)
作品のイメージとのギャップが 面白いですね。
お話の長さは、5歳くらいから でもいいかと思いますが、
内容を 深く楽しむには、
グリム童話にもあるような 闇の気配にも
免疫ができる 年令の方が、いいかもしれません。
いつもより 少しディープな センダックの世界、
味わってみませんか?
やみつきになるか、怖~くなるか・・
いろいろ 考えているうちに また細部が気になって、
何度も読み返してしまう Fでした~☆