中秋の名月

2025年の中秋の名月(旧暦8月15日のお月様が1年のうちで1番美しいとされる)は、10月6日です。
中秋の名月といえば9月のイメージがありますが、旧暦をもとにしているため10月になる場合もあるようです。
この中秋の名月は、平安時代に中国から伝わった風習ですが、清少納言は『枕草子』のなかで「夏は夜 月の頃はさらなり」「秋は夕暮れ」と言っていますし、「有明の月」を「あはれ」「をかし」と言っていますので、あまり「中秋の名月」には関心がなかったのかもしれません。その一方で、同時代を生きた紫式部は『源氏物語』のなかで「8月15日の月」を複数場面で描き、そこに光源氏の心情を重ね、物語に深みをあたえています。清少納言と紫式部はなにかと比較されますが、こんなところにもふたりの違いが垣間見れるのはおもしろいですね。また、吉田兼好は『徒然草』のなかで「秋の月は、限りなくめでたきものなり。いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分かざらん人は、無下に心うかるべき事なり」と述べています。少し言い過ぎのような気もしますが、それだけ兼好は中秋の名月を愛でていた、ということなのでしょうね。
さて、そんなふうに文学作品にもたびたび登場する中秋の名月を楽しむのは人ばかりではないようです。
木をのぼっていくくんちゃんを迎えるさっちゃんとごうくん。ぐんぐん木をのぼって、さんびきは何かを作っているみんなのもとへ。子どもたちは協力して木の枝を切って、しばって…、完成したのはお月見台!真っ赤な夕日が沈み、ひろがっていく夜。お団子、栗の実、どんぐりをおそなえしたら…、こんにちは、まんまるおつきさま。
そう、お月見を楽しんでいるのは、なかよし14ひきのねずみの家族です。木の上にのぼるときも、ちゃんとだいじなお人形をおんぶしているくんちゃんや、お月見台から身をのりだそうとするろっくんのしっぽを、ちゃんと掴んでいるさっちゃん、お月様そっちのけでおにぎりを食べている子もいれば、「月の宴」のように笛を吹いている子もいて、お気に入りの子を探すのも楽しいですね。
そして、この絵本の魅力は、なんといっても時の経過の表現です。お昼の太陽の日差し、木々や山を赤く照らす夕日、夕方と夕暮れが混じる黄昏、月が輝く夜。その移り変わりが、黄色から赤、紫、そして紺へと色調を変えることで表され、とてもキレイです。ぜひ、いろいろな楽しみ方で絵をじっくり味わってください。
私たちは、14ひきのねずみたちのように、木の上にお月見台を作ることはできませんが、14ひきのねずみたちのように、自然の恵みに感謝しながら、お月見をすることはできます。自然を感じる機会が減りつつある今だからこそ、年に1回の中秋の名月の日に、お月見をしてみてはいかがでしょうか。
(担当:S)
『14ひきのおつきみ』
いわむらかずお /さく
童心社
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