もりくいクジラ
赤羽末吉さんといえば「スーホの白い馬」を思い浮かべる方が多いでしょうか。
こちらは、荒々しいクジラ漁を描いた絵本。
今からおよそ400年前の、紀伊国(和歌山県)太地では、
クジラは村人が生きるための大切な糧だった。
太地の漁師たちは命をいただくことを重くうけとめながらも
クジラとともに小さな村を守り続けた・・
タイトルの『もりくい』とは、『森喰い』ではなく
『銛喰い』のこと。
もりくいクジラは 漁師がむかし突き刺した長くて太い銛を
背中に受けながらも生き続けている、巨大なクジラのことです。
この巨大クジラと、因縁をもった漁師の 荒波での闘いが描かれた、
観音開きのページはとても見事です。
先日ラジオでシャチの研究をされている方の話をきいて
「浜に打ち上げられたシャチの解剖をするとき、命のおかげで研究がすすめられることに常に感謝している」
というようなことをいっていたのですが
この絵本の中の語り部、ひよりじいさんも
話し終えると 子どもたちの前でくるしそうな顔をし
つみもないクジラをとらなければ くらしていけないくるしみが、むねにつまっているようにみえた。
と書かれています。
くじらやシャチというと遠い話に聞こえますが
ぶたや牛、鶏と考えるとぐっと身近になります。
赤羽末吉さんの絵がもつ力強さと、生きものへのまなざしが美しい絵本です。
色使いも美しい!
じつは現在開催中の企画展【波は来て、還す】のデザインで
この絵本の色の使い方を勉強したスタッフMでした🐳