「つれづれなるままに」-エッセイ記念日
2月28日はエッセイ記念日。とあるエッセイストグループによって定められた日で、エッセイストの元祖といわれる哲学者ミシェル・ド・モンテーニュの誕生日にちなんで制定されたそうです。
「エッセイ」、つまり日本語でいうところの「随筆」です。皆さんも読まれたことがあるでしょうか。
随筆と聞いて、学生時代に勉強した『枕草子』や『徒然草』を思いだした方もいるでしょう。
そう、エッセイとは、平安時代から続く歴史ある文学形式で、『徒然草』の有名な冒頭「つれづれなるままに」のように、書き手の体験や暮らしをもとに、そこから生まれる気持ちや考えを「手持ちぶさたにまかせて」綴ったもの、です。
それゆえ、書き手の人間性や個性が色濃く現れるジャンルでもあります。
また、テーマも自由自在。生活のあれこれはもちろん、更には子育て、旅、食、美容、ファッションなどにクローズして書かれたものや、最近ではタレントさんたちによる作品も人気を集めているようです。書き手への興味関心から手にとる人、テーマに惹かれて手にとる人、さまざまでしょう。そうして、「ああ!わかるわかる!」「へえ、こんなふうに考えられるようになりたいなあ」「すてきな暮らし方だなあ」と、共感したり憧れたりもできるので、手軽に楽しむこともできます。
私も時々エッセイを読みます。新聞や雑誌の連載で読んだり、話題の作品を購入したりもしますが、なかでも、ずっとお気に入りで今でも時々引っ張りだして読むのは、脚本家・エッセイスト向田邦子の作品です。
ひと世代前のなつかしい風景、親やきょうだいとの愛憎劇はもちろん、私は特に、度々登場するお料理や食べ物の描写が好きで、家事のやる気がでないときは決まってこれを読みます。
そうすることで、日頃はすっとばしてしまうような下ごしらえや、お出汁をとる、美しくしつらえるといったひと手間さえ愛おしくなるのでふしぎ!
そう、エッセイストの手にかかれば、ごくごく「ふつう」の日常も、いえ時には腹立たしささえ覚えるような出来事、人間のいやらしさですら、鮮やかな彩りを帯びて魅力的にうつるもののようです。
いかがでしょう。
皆さんもぜひ、お気に入りのエッセイ作品を見つけてみてはいかがでしょうか。
見つけられない人は、先ほど登場した『枕草子』や『徒然草』を手に取ってもみるのもおすすめです。『枕草子』第25段「にくきもの」の冒頭には「なでふことなき人の、笑がちにて、もの言ひたる。」(「癪にさわるもの」たいしたこともないくだらない人が、にやにやしながら盛んにしゃべっているようす」と書かれてあります。これらは現代を生きる私たちにも共感できるところがあったり、自分にとっての「にくきもの」を考えてみみたりと、新たな喜びがあるしれません。また、こうして「書く」ことを意識することで、とりとめもない出来事をじっくりと観察したり、客観的に分析したりすることにもなるので、日常が、より愉しく、豊かに感じられるようになるかもしれません。ぜひ、「つれづれなるままに」どうぞ!
(担当:C)
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