シリーズ〈今月の1冊〉- 2025年11月『サンタクロースと小人たち』

11月になり、街のようすも年末に向けて華やかになってきましたね。イルミネーションに彩られた街並み、飾られたクリスマスツリー、なんだか街を歩く人たちも楽しいイベントが待ち遠しいような表情に見えて、寒くても、人の温かさやつながりを感じられるこの時期が私はとても好きです。
そして、今月ご紹介する1冊は『サンタクロースと小人たち』(「小さいさくらんぼコース」およそ5~6才)。クリスマス前のこの時期にぴったりの「童話館ぶっくくらぶ」でもにんきの絵本です。
フィンランドの北のはずれにあるコルバトントリという山のふもとには、ふしぎな村があります。だれもみたことがないその村は、じつはサンタクロースが何百人もの小人やトナカイに囲まれて暮らしている村だったのです。この村の小人たちの仕事は、世界じゅうの子どもたちへのプレゼントを用意すること。その職業はさまざまで、大工さんや、機械の熟練工、画家、布を織る人、印刷をする人、トナカイの世話をする人、そして、どこによい子がいるか調査にでかける小人もいます。
「サンタさんってどこに住んでるの?」「おもちゃをどうやって用意してるの?」「どうやって世界じゅうにおもちゃを運んでるの?」と、お子さんに質問攻めにされた親御さんもきっといることでしょう。この絵本はそんな子どもたちの疑問に、楽しく、温かく、ユーモアたっぷりに答えてくれて、クリスマスまでの1年間のサンタクロースと小人たちの暮らしを伝えてくれます。お話はもちろん絵も楽しく、細かいところまで作者の遊び心が満載です。何百人いる小人たちのキャラクターや個性が細かく描かれ、1頁1頁小人たちのようすを追っていくだけでも飽きることがありません。
この絵本は、わが家でもクリスマス時期の定番絵本でした。わが家のふたりの子どもたちは、年令がひと回り以上離れていて、おまけに性格も好みもまったく違って、もちろん絵本の好みもそれぞれ。そんなきょうだいですが、そろってこの絵本はお気に入りでした。読んだあとはふたりして「サンタさんくるかな。小人さんはいつ調査にくるのかな…おりこうにしなきゃ」と。10数年経てふたりが同じ感想を言うので、この“サンタさんくるかな問題”はいつの時代も…と笑ってしまいました。
わが家の年の離れたふたりがとりこになったように、この絵本には時代が変わっても色褪せない魅力があるのでしょうね。そして、絵本のなかには「日本」もでてくるんです。息子たちは「日本にもきてくれる!」ととても嬉しそうにしていました。遠い国のお話だけど、身近に感じることで夢や想像力がどんどんふくらんでいくような、そんなひとつひとつの作者の細かい気配りと描写が、子どもたちの心をつかむのでしょう。
クリスマスが待ち遠しい日々のおともに、ぜひこの絵本を手にとってみてください。
(担当:G)
『サンタクロースと小人たち』
マウリ・クンナス/作
稲垣美晴/訳
偕成社
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいさくらんぼコース」(およそ5~6才)
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