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シリーズ〈今月の1冊〉 - 2024年7月『のろまなローラー』


今月の1冊-7月

 

シリーズ<今月の1冊>

今月ご紹介するのは、「大きいいちごコース(およそ2~3才)」の『のろまなローラー』です。


 

この絵本には、地面を平らにする働く車“ロードローラー”の姿が描かれています。

 

のろまなローラーローラーが、重い車をごろごろ転がし、道をいったりきたりしながらなおしていると、トラックが「どいたり、どいたり」と、横を追い越していきました。リムジンや小型自動車たちもローラーをばかにしながら追い越していきます。それでもやっぱりゆっくりと、ローラーが道をなおしていくと、先ほどのトラックが止まっているのが見えました。トラックはでこぼこの道でパンクして休んでいたのです。

 

他の車たちに笑われても、まったく動じす自分の職務を全うするローラーは、頼もしく、意志の強さが感じられます。そして、パンクした車を見かけると、「どうしましたか、トラックさん。やまの ふもとで おつかれですか」と、話しかけるところに、優しさや気立ての良さを感じます。日が暮れて、平らになった坂道をゆっくり後戻りする姿にも安心感を覚えます。

 

この物語は、昭和40年(1965年)に発行された「こどものとも」で初めて世にでました。東海道新幹線開業、東京オリンピック開催の翌年で、工業化や土地の開発も進んだ高度経済成長期まっただなか。オリンピック景気やいざなぎ景気など好景気にわく一方で、公害や都市の人口過密と地方の過疎など、ひずみがでてきた時代でもあります。

早さや便利さ、そしてカッコよさなどがもてはやされても、しっかりどっしりと地に足をつけ進むローラーは、じっくり物事を進める大切さを教え、周囲を顧みない行為へ警笛を鳴らしてくれているような気がします。そして、初版から60年近く経った今を生きる私たちにも、励ましを与えて続けてくれます。

 

また、描かれている青い標識には、「国道166号 ROUTE」とあります。国道166号線は大阪府羽曳野市と三重県松阪市を結ぶ道路です。パンクしたトラックが休んでいた山は、生駒山かな?それともいくつかある峠かな?など、想像しながらローラーは今どこを進んでいるのだろうと、タイムトラベルした気分で読むのも楽しいです。

言葉のリズムもよく、声にだすと心地よいこの絵本。ぜひ、ローラーの気持ちになって、お子さんに、そして自分自身に、読んでみてはいかがでしょうか。

 

(担当:M)


のろまなローラー『のろまなローラー』

 小出 正吾/作
 山本 忠敬/絵
 福音館書店

「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース  ▶「大きいいちごコース」(およそ2~3才)

 

 

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