シリーズ〈今月の1冊〉 - 2024年9月『ジャイアント・ジャム・サンド』
シリーズ<今月の1冊>
今月ご紹介するのは、「大きいくるみコース(およそ4~5才)」の『ジャイアント・ジャム・サンド』です。
今月ご紹介するこの絵本は、以前は別の出版社より出版されていましたが、今年度より童話館出版にあらたに仲間入りしました。
ある夏の暑い日。チクチク村にハチの大群がやってきました。その数はなんと400万匹!村人総出の話し合いのすえ、パン屋のおじさんが提案したジャイアント・ジャム・サンドをつくってハチを撃退する作戦を実行することに!この作戦の成功はいかに!?
「むんむん むしむし あつい なつ」
この言葉から始まる物語。なにか始まりそうだぞ!と1頁めから心を鷲掴みにされてしまいます。リズミカルな言葉はもちろん、その奇想天外で豪快なストーリーとともに、細かく描きこまれた絵も魅力のひとつ。この絵本が好きな息子と「あっ!ここにもハチ‼︎」とか、「このおじさんたちまたいたね‼︎」とか、「へんなヘリコプターいる‼︎」など会話も弾み、読めば読むほど楽しめて、好きになる、そして、いつも最後は「おもしろかったねー」と親子で言い合う、そんな絵本でした。
そして、ジャムサンドをハチの罠にするなんて、発想がすごい…と思っていたら、著者のジョン・ヴァーノン・ロードさんは実際にパン屋さんの息子だったそうです。さすがパン屋さんの息子!パンづくりの工程のていねいさと、ジャムサンドがおいしそうに描かれているのはそういう理由だったのか、と納得しました。400万匹のハチの大群に、そのハチをはさんだジャムサンド…虫がにがてな私からすると、「ひえ~っ!」と恐怖でしかないはずのストーリーなのに、ちっともそんな気持ちにならないのは、物語のおもしろさと絵のすばらしさがあるからなのでしょう。
このお話の影の主役スズメハチの行動範囲は巣から1~2㎞と言われていますが、時期によっては10㎞以上移動することもあるそうです。6~8月は巣が手狭になったためのお引越し、9月中旬以降はエサを求めての大移動、などなど。ハチたちがチクチク村にやってきたのは暑い夏、なので、巣が手狭になったためのお引越し途中だったのかもしれません。400万匹の巣ってどれだけ大きいんでしょう?チクチク村にやってくる前のハチたちのお話も読んでみたいですよね。(気になるのは私だけでしょうか…)
さて、秋口はハチが活発に動きだす季節なので、ハチを見かけることも多くなりそうです。息子とこの絵本を楽しんでいたころ、ハチを見かけると『ジャイアント・ジャム・サンド』の話をしながら、「ジャムサンド食べたいね~」なんて言っていたことを思いだします(もちろんハチ抜きの)。絵本を読んで楽しんで、外にでて、物語の世界と通じるできごとを見つけてまた楽しんで…。今回改めて『ジャイアント・ジャム・サンド』を読みながら、そんなしあわせな日々を思いだしました。
この絵本は、表紙を見ただけでそんな記憶がよみがえってくるほど、くり返し楽しみました。とにかく楽しく、私も大好きなこの絵本、皆さんにとってもそんな1冊になってもらえたら嬉しいです。ぜひ、読んでみてくださいね。
(担当:G)
『ジャイアント・ジャム・サンド』
ジョン・ヴァーノン・ロード/文・絵
安西 徹雄/訳
童話館出版▶詳しくはこちら
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「大きいくるみコース」(およそ4~5才)
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