7月23日 ふみの日

「毎日、暑いですね。なかなか一緒に遊べないけれど、家族みんな元気にしてますか?」
最近、こんな書きだしで娘と一緒に手紙を書く機会がありました。招待を兼ねての手紙だったのですが、わが家はちょっと特別なお誘いのときは手紙を書くようにしています。この“ちょっと特別”な気持ちはもらった相手にも伝わるらしく、届くといつも嬉しそうに電話をかけてきてくれたり、時にはお返事の手紙を送ってくれたりすることも!
最近では携帯電話でのやり取りが主流となり、手紙やはがきを送ることが少なくなったといわれています。でもそんな今だからこそ、だいじな人へ手紙を書いてみてはいかがでしょうか。
今日、7月23日は「ふみの日」です。7月は旧暦で文月(ふみづき)、23日が「ふ(2)み(3)」と読めることから、1979年に郵政省(現:日本郵便)によって制定されました。「手紙の楽しさ、手紙を受け取る嬉しさを通じて、文字文化を継承する一助となるように」という、願いを込めて生まれたもので、郵便局では“「ふみの日」にちなむ郵便切手”も発行されています。
手紙を書くというのは、確かに携帯電話でやり取りするより、手間と時間がかかります。でも、ふしぎなもので、書いている時間は相手への気持ちや自分の今の想い、ひいては自分が何を大切にしながら生きているのか、そういうことまで浮き彫りにする力があるように感じます。手紙を書くと相手や自分への解像度が上がる…そんなイメージでしょうか。どんな言葉でも文字でも自分らしく。心のままに書いてみる。書き終わったあとの満足感、それも手紙を書くことの楽しさですよね。
そして私が手紙と聞いて、すぐに思いだしたのはこの絵本…
『おりこうなビル』(「小さいくるみコース」およそ3~4才)です。
ある日、大好きなおばさまから、メリー宛に手紙が届きます。手紙はおばさまのおうちへのご招待でした。喜んだメリーはすぐに手紙を書き、でかける準備を始めるのですが、あわてたメリーはなんと大切な人形であるビルを荷物に入れ忘れてしまいます。涙にくれるビル。さてビルはこれからどうなるのでしょう!?
この絵本も、まだ幼かった娘に何度も読み聞かせをした1冊ですが、メリーが荷物を何度も詰めなおす場面で娘がいつもハラハラ、ヒヤヒヤ…。「ここにまだあるよ!」と声にだして教えるほど(笑)。娘にもだいじなクマのぬいぐるみがいるので、気持ちが重なってしまうのでしょう。
でもここからが“おりこうな”ビルです。最後は娘も笑顔にしてくれました。
そして、この絵本の魅力がもうひとつ。それは、お話の文章や作中の手紙がすべて手書きで書かれていること。これがなんとも良い味わいで、まるで自分のために誰かが手作りしてくれた絵本のような温かみを感じます。(頁番号まですべて手書き!)手紙が作中に登場する絵本はたくさんありますが、手紙の文字まできれいな印刷文字で書かれているとなんだか味気ないなと思ってしまっていました。この絵本では、やさしいおばさまらしいきれいな文字、子どもらしく、すなおな喜びが伝わってくるメリーらしい文字を見ることができて、なんだか嬉しくなったのを覚えています。
夏のおでかけの準備前に、家族で読んでみるのも楽しいかもしれません。お互い、だいじなものを忘れておでかけしたりしないようになるかもしれませんよ。もちろんビルのがんばる姿も見届けてあげてくださいね。
そして久しぶりに、手紙やはがきを書いてみるのはいかがでしょうか?
旅先から送ってみるのもまた良いものですよ。
(担当:A)
『おりこうなビル』
ウィリアム・ニコルソン/作・絵
つばきはら ななこ/訳
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいくるみコース」(およそ3~4才)
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