卯年のはじまりに -グレー・ラビットと森のなかまたち-
2023年の「ぞうの本屋さんブログ」は、卯年にちなみ、うさぎが登場する絵本からスタートです。今年も、ブログを楽しんでいただけるよう、邁進してまいります。お付き合いどうぞよろしくお願いいたします。
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うさぎの絵本、といって思い浮かぶのはなんでしょうか。
言わずと知れた『ピーターラビット』シリーズ、ディック・ブルーナのうさこちゃん(ミッフィーちゃん)シリーズ、『めがねうさぎ』シリーズ、あとはイソップの『うさぎとかめ』もありますね。
けれど、今回ご紹介するのは、『グレー・ラビットと森のなかまたち』(2冊組)です。
この絵本は、『グレー・ラビットとヘアとスキレル スケートにいく』と『ねずみのラットのやっかいなしっぽ』の2冊組で、いなかの森に住む、グレー・ラビットたちのお話です。
グレー・ラビットは、働きものでやさしく、みんなのめんどうをみてくれるお姉さん的な存在。
そんなグレー・ラビットといっしょに森の一軒家に住むのは、かっこうつけだけどあまえたところがあるヘア(大うさぎ)と、おしゃれ好きでちょっと毒舌のスキレル(リス)。
牛乳配達のヘッジホッグさん(はりねずみ)、ものしりのふくろう博士など、でてくる動物たちは、個性豊かで魅力的です。
1冊目の『グレー・ラビットとヘアとスキレル スケートにいく』は、題名のとおり、湖が凍った日に、みんなでスケートに行くお話です。
朝起きて、足がしもやけになってしまったと、「グレー・ラビット、てあてして、てあて」とあまえるヘアに、「わたしの手はあかぎれよ」と手をマッサージしてもらうスキレル。
そんなふうに始まった、なにもかもが凍るほど寒い日。
牛乳配達にきたヘッジホッグさんに、「農場ちかくで、スケートをしている。みんないくっていってるよ」、と教えてもらった3びきは早速スケートへ行くことに。
家事をして、みんなのためにお昼のサンドイッチをつくるグレー・ラビット。
しっぽの手入れをして、一番いい服に着替えるヘア。
しっぽにリボン、首からネックレス、洋服にちょうリボンをつけて、おめかしするスキレル。
とおでかけの準備のようすもそれぞれ。
大騒ぎをしながら準備をして、思い思いのかっこうで、スケートを楽しむ3びき。
スケートをして、お昼ごはんを食べ、またスケートを楽しんで、空がスミレ色に変わるころ、家路につきます。
家に戻ってみると、なんと誰かが、グレー・ラビットが用意していた食事を食べ散らかし、スキレルのベッドで眠っていたのです。不法侵入者をこらしめるために、スキレルは、ベッドで寝ているラットのしっぽを結び…。
そして、お話は『ねずみのラットのやっかいなしっぽ』へと続きます。スキレルに結ばれてしまったしっぽは、解けるのか…。
前書きに、「グレー・ラビットの暮らしは、いなかの暮らしです。このお話をかいた、私の暮らしとそっくりなのです」とあり、作者のアトリーがグレー・ラビットと同じように暮らしていたことがわかります。だからこそ、グレー・ラビットたちの暮らしに息遣いが感じられ、本当にどこかのいなかの森でグレー・ラビットたちが暮らしていると思わせてくれるのかもしれません。
神宮輝夫さんの訳もステキで、「赤い夕日がとおくの山のうしろにかくれ」「空がスミレ色にかわり、野原のかげがこくなりました」と、昼から夜への移り変わりが描かれていて、ただ単に「夜になり」と表現するよりも、空の色や表情がわかります。
そして、なんといっても、マーガレット・テンペストの絵!繊細に、表情豊か(仕草がかわいい)に描かれているので、ポストカードにして飾りたいくらい、ステキです。
リアリティを感じさせてくれる物語り、ステキな訳、美しい絵、と三拍子そろったこの絵本、卯年の始まりにぜひ手に取ってみてください。
『グレー・ラビット』のお話はもう1冊、『ふくろう博士のあたらしい家』(▶詳しくみる)がでています。
『グレー・ラビットとヘアとスキレル スケートにいく』
作:アリスン・アトリー
絵:マーガレット・テンペスト
訳:神宮 輝夫
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース
▶「小さいみかん」(およそ7~8才)
『ねずみのラットのやっかいなしっぽ』
作:アリスン・アトリー
絵:マーガレット・テンペスト
訳:神宮 輝夫
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース
▶「小さいみかん」(およそ7~8才)
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