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新しい場所へ  ―引っ越しの日


引っ越しの日

 

1013日は引っ越しの日。なぜこの日?と思い調べてみると、1868(明治元年)年のこの日に、明治天皇が京都御所から江戸城(今の皇居)に入城されたことが由来だそうです。

皆さんは引っ越しをしたことがありますか?私はこれまで引っ越しを6回経験しています。これは多い?少ない?どちらなのでしょう?
なかでも一番思い入れがあるのは、中学3年生のときの引っ越しです。私の中学校卒業のタイミングで小さな田舎の町から市内へ引っ越すことになりました。荷物の準備や大変さなどは覚えていませんが(自分のことばかりで、おそらくあまり手伝っていなかったのだと思われます…)、ひとつだけ忘れられないことがあります。それは家に帰ると本棚に並べられていた絵本がほとんどなくなっていたことです。何気なく目をやって、本がなくなってガランとしてる本棚を見たときの衝撃!! 私は慌てて「本はどうしたの!?」と母に詰め寄りました。すると「公民館に寄付したよ」と。「なんで勝手にそんなことするのよー!」と半泣きで抗議しましたがあとの祭り…。「小さいころの絵本だから今は読んでないでしょ?持って行くの大変だし、他の子に読んでもらえるならそれでいいじゃない」そうだけど…そうなんだけど…。でも、そうじゃなくて…。大好きだった絵本が一気に消えてしまって心が急にしぼんでいきました。

そんなとき「でも好きだった本は取っておいたよ」と母。そのなかの1冊が今回ご紹介する『大どろぼうホッツェンプロッツ』です。ドイツのプロイスラーの作品で今でも本屋さんに置いてあるベストセラーの1冊です。私はとにかくこの本が大好きで、何度も何度も読みました。続きがあることを知り、『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』と『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』も理由をつけて買ってもらい、今でも本棚にあります。

 

ホッツェンプロッツ一番のお気に入りはやはり大魔法使いツワッケルマンが登場する第1作です。
物語はカスパールのおばあさんの大切なコーヒーひきが、ホッツェンプロッツに盗まれてしまうところから始まります。このコーヒーひきはカスパールと大親友のゼッペルがおばあさんの誕生日プレゼントとして贈ったものでした。2人はおばあさんの大切なコーヒーひきを取り戻すためにホッツェンプロッツを捕まえようとしますが、逆に捕まってしまいます。そして離れ離れになった2人の、それぞれの冒険が始まります。大泥棒のホッツェンプロッツ対ゼッペル。大魔法使いツワッケルマン対カスパール。「今日はカスパールになって読もうかな?」「今日はゼッペルの冒険にしようかな?」とそれぞれを追体験しながら楽しんで読んでいました。未読の方はぜひお子さんと楽しんでみてくださいね。

 

 

私が楽しげにこの本を読み返している姿を見て、娘はこの本に興味津々!でも挿絵をパラパラとみてツワッケルマンの不気味な装いにびっくりしたようすで、「まだ泥棒がこわいから、もう少しこわくなくなったら読んでみる。(8才)」とのことです(笑)

絵本や本は確かに増えてくるとどうやって収納しよう?と悩んでしまうのは確かです。でも…子どもだったころの私にとってそうであったように、そこにあの本がある、いつでも開けばあの世界に行ける、という安心感を与えてくれる絵本や本は、心のお守りのような存在だと思うのです。母から何度も読んでもらった温かい記憶を持つ絵本、旅行に連れて行った絵本、姉と一緒になりきって遊んだ絵本、自分で初めて読み通せた本…。いろんな思い出がそこには詰まっていて、これまでの自分を作ってきた作品たちは大切な自分の一部になっているような気がしています。娘もそう思ってくれているようで、「読まなくなった赤ちゃんの本も絶対お下がりにはあげないで。私がずっと持っておくの」と夫に話しているのを聞いて、「わかるよ、その気持ち!お母さんは絶対残しておくからね」と思わず言ってしまいました(笑)

大人になった今、子どものころ、自分が好きだった絵本に出会うのもまたいいものです。ぜひ秋の夜長に昔の自分と一緒に、お気に入りだった本を読みかえしてみてはいかがでしょうか?

 

(担当:A)

 


ホッツェンプロッツ

『大どろぼうホッツェンプロッツ』

 オトフリート・プロイスラー /
 中村浩三  訳

 偕成社
 「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース  ▶「小さいりんごコース」(およそ9~10才)

 

 

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