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春の訪れを告げる - 啓蟄 3月5日


啓蟄

 

逃げるように2月が去り、春がすぐそこまできているのを少しずつ感じられるようになってきました。野山に木蓮の花が咲いているのを見つけたり、食卓に菜の花を並べたり。春の訪れは寒さで縮こまった身体も心も柔らかくしてくれる気がします。

今日は二十四節気(にじゅうしせっき)で「啓蟄」の日にあたります。この言葉を聞くと「あぁ、春が近いんだな」と感じられるぐらい、現代でも使われている言葉ですが、二十四節気が中国で考案されたのは戦国時代(紀元前453年〜紀元前221年)の頃で、季節の移り変わりを知り、農業を行うための大事な目安とされていました。日本には飛鳥時代に伝わり、風土にあうように改定された二十四節気は、今でも立春や春分、夏至など日常のなかでも、耳にすることが多いですね。

春の二十四節気のひとつ「啓蟄」とは、「冬籠りの虫が這いでる」という意味であり、土の中で冬ごもりをしていた虫たちが、目覚め始める時期のことです。もぞもぞと土のなかで動きだすようすがなんだか目に浮かびますね。

そして、この二十四節気を掘り下げてみていくと、さらに二十四節気を細かく分け、5日ごとに区切った「七十二侯(しちじゅうにこう)」というものがあります。農作業だけではなく、季節の花や鳥にも目を向けてつくられており、その季節に合わせて決められた名前がとてもすてきなので、啓蟄に関する七十二侯をここでご紹介します。

 初侯 蟄虫啓戸 (すごもりのむし とをひらく) 3月5日頃
 次侯 桃始笑  (ももはじめて さく)     3月10日頃
 末侯 菜虫化蝶 (なむし ちょうとなる)    3月15日頃

自然を見つめる優しい視点で言葉が選ばれているのを感じます。昔は花が咲くことを“笑う”と表現していたそうで、昔の人の内面の豊かさまで伝わってくるようでうっとりします。

他にも 虹初見(にじはじめてあらわる)は鮮やかな虹が見え始める時期(清明 末侯 4月17日頃)であり、鷹乃学習(たかすなわちわざをならう/たかすなわちがくしゅうす)は、今年生まれた鷹が飛び方の練習を始める時期(小暑 末侯 7月17日頃)なのだそうです。興味を持たれた方は、ぜひ調べてみてくださいね。

 

さてそんな春の始まり「啓蟄」にぴったりといえばこの絵本、『根っこのこどもたち目をさます』です。

根っこのこどもたち

物語は地面の下でぐっすり眠っている根っこのこどもたちを、土のおかあさんがおこして回るところから始まります。

「さあ、おきなさい。春がきますよ。しごとを はじめなくてはいけません」

目をさました根っこのこどもたちはさっそく仕事にとりかかります。女の子たちの仕事は、春に着る自分たちの服を縫うこと。自分の好きな色の服ができあがると土のおかあさんに見てもらいます。一方、男の子たちの仕事は眠っている虫たちをおこし、春の色に塗り替えること。
すっかり用意ができたとき、いよいよ春がやってきました。春の装いに身を包み、花の子どもとなった根っこのこどもたちが、地面の上へとでていく時期がきたのです。

 

オルファースが描く花のこどもたちがとても愛らしく、眺めるだけでも春を感じられる絵本です。幼かった娘と春に散歩にでかけたとき、「ここにはスミレのこどもがきたんだね〜」などと楽しそうに話しながら歩いていたのを思いだしました。目には見えないけれど、その先を見つめる力。娘の頭のなかには、いろんなお話のポケットがあり、そこから引きだすことで、目の前の景色がいろんな世界に変化しているのでしょう。そうやって、日々を豊かにしてくれるのも、絵本が持つ力なのだなと、娘の成長を見つめながら、ありがたく感じています。

 

そんな娘が気に入ってよく眺めていた春の絵本は『はるは』です。小さい子向けの季節をめぐる絵本なので言葉は少ないですが、その訳をしているのが、昨年逝去された谷川俊太郎さんなのです。緻密に書き込まれた絵を眺めながら、選び抜かれた言葉に浸る時間…。とても贅沢な時間を過ごしているのだなと読み返すたびに思います。春の訪れを一足お先に絵本で、なんていかがでしょうか。

(担当:A)

 


根っこのこどもたち『根っこのこどもたち目をさます』

 ヘレン・ディーン・フィッシュ/文
 ジビレ・フォン・オルファース/絵
 いしい ももこ/訳編
 童話館出版 ▶詳しくはこちら

 「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいさくらんぼコース」(およそ5~6才)

 

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