しとしと ぴっちゃん …梅雨入り
6月に入ると雨が多くなり、ニュースでは、「今年の梅雨入りは…」など天候の話題が増えますね。
梅雨は、日本(※北海道と小笠原諸島は梅雨がないそうです)を含む東アジアの広範囲に見られる気象現象で、特に、稲作などの農業にかんしては、暑い夏を前に、水を蓄え、田畑を潤すために、必要不可欠な季節です。そして、「入梅」は、梅雨入りの時期を事前に示す雑節の1つで、今も暦に記されているほど、昔から大切にされてきました。
…そうはいっても、皆さんにとってはいかがですか?「洗濯物が乾かなくて困る」「子どもたちの行き帰りが心配」「外遊びができない」「カビが気になる」「なんだか気が滅入る」…などなど、もしかすると、“いやなイメージ”のほうが強いかもしれませんね。
一方で、「雨の音を聞いているとなんだか心が落ちつく」「癒される」「よく眠れる」という人もいらっしゃるかもしれません。
そこで、雨の音を聞きながら、雨の絵本を楽しむのはいかがでしょうか。
今回おすすめしたいのは、『あかいかさ』です。
「雨がふる?ふらない?」
迷ったけれど、やっぱりあかいかさを持ってでかけることにした女の子。「ほら ほら!ふってきた」。
すると、次々に、かさに入れてと動物たちがやってきます。こいぬが1ぴき、こねこが2ひき、にわとり3ばに、こうさぎ4ひき…。まだまだどんどんやってきますよ!そうして、あかいかさの下で、女の子と動物たちは楽しく歌をうたいます。
シンプルな言葉と、黒一色に、かさの赤が美しいイラスト、くり返しで進む温かいストーリー…。どこをとっても、2~3才のお子さんにぴったりです。読んでもらうお子さんはきっと、自分と女の子を重ね合わせ、自分のかさに、ふわふわのたくさんの動物たちがはいってきてくれるわくわく感を満喫できるでしょうし、次はなんの動物かな?と、親子の会話もはずみそうですね。
なにより、最後の1ぴきまで、断らずに招き入れるところがいい。動物が増えるたびに、濡れないようにひそかに少しずつ大きくなっていくあかいかさにも、女の子の「やっぱり かさ もってって よかった」という最後の言葉にも、この絵本のすみずみに、安心感が漂っているようです。
大人にとっての「かさ」は、なにより雨をよけるためのもので、多少のこだわりをもって選んだとしても、それ以上ではない気がしますが、子どもにとってはどうでしょう。くるくる回して飛び散る水に夢中になったり、ふり回して裏返しにしたり、先っぽで土の上に絵を描いたり、身近な遊び友だちでもあります。さらに、ひろげたかさの下で、自由にいろいろな物語をつむぐことも、できますね。
すぐにでもごっこ遊びが始まりそうなこの絵本とともに、いつも以上に、楽しい梅雨をお過ごしいただければと思います。
(担当:I)
『あかいかさ』
作 ロバート・ブライト
訳 しみず まさこ
ほるぷ出版
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「大きいいちご」(およそ2~3才)
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