「絵本とのつきあい方」3~4才のお子さんの場合
絵本には、昔から読み継がれる名作、といわれる絵本があり、その多くは3~4才のお子さん向けです。「絵本の黄金期」ともいわれ、優れた絵本が多く存在するのも、この3~4才、という年令が大切であることの現れなのでしょう。
言葉の獲得、想像力や言語化する力の発達、と成長が著しいこの時期に、昔からの知恵を伝えてくれる昔話や、怖いけど知りたいという子どもの好奇心を刺激するような物語など、できるだけさまざまなジャンルの物語に出会わせてあげたいですね。そのなかでも、今回は、「ファンタジー」についてとりあげたいと思います。
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ごく幼い子どもの世界は「今」で作られていて、「この先」のことを想像するのはまだむずかしいですが、少しずつ、「この先」も想像することができるようになってきます。「想像」する力がどんどん伸びていくこの時期には、「(起承転結のある)ファンタジー」の物語を読んであげてください。
登場人物になりきったり、現実ではない世界で楽しんだりする「ファンタジー」は、目には見えない世界を、想像して楽しむーつまり「想像力」や「空想力」を育んでくれます。
以前、「童話館ぶっくくらぶ」の会員のお母様より、こんなお話を伺いました。
「『子どもに聞かせる世界の民話』(「大きいさくらんぼコース」~「大きいみかんコース」の親のための本)を、子どもと布団に入って読んであげたら、子どもが、その場面が映像で流れるって言っていたんですよね」と。
まるで映画を見るように、本を楽しむことができたら、どれだけステキだろうと思います。そして、映画のように本を楽しむには、やはり「想像力」や「空想力」が不可欠なのだと思います。子どもたちには、たくさんの「想像」「空想」の世界を楽しんでほしいですね。
また、「想像力」は物語の世界を楽しむだけではなく、現実の世界でも大きな力を発揮します。誰かを思いやる気持ちや新しいなにかを創り出す力も、「想像すること」から生まれると思います。身近なところだと、日中に夕ご飯のメニューを想い浮かべて楽しみに思ったり、誰かへのプレゼントを喜んで笑ってくれる顔やどれが似合うかな、と想像しながら選んだり、こんなことができたらいいなと想像することで、新しい技術が生まれたり…。そして、身近な人の幸せを、想像し願うことが少しずつ広がっていくと、世界平和へとつながっていくような気もします。
そして、もう1つ。このころの子どもたちは言葉の力がついてきて、たくさんの言葉を覚えていく時期ですが、どうか、「絵本は楽しむもの」、ということを忘れないでほしいのです。「言葉」を覚えさせるために絵本を子どもに読ませたい、という話もよく耳にしますが、絵本を読んであげることで、しぜんと言葉の力が身についていくことと、言葉を覚えさせたり、ひらがなを読めるようにさせるために、「絵本」を読ませることとは違います。ぜひ、読み手の大人の方が楽しみながら、絵本を読んであげてください。
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少しずつ、身体の成長とともに行動範囲が広がり、親の目が届かないことも多くなっていきます。子どもの成長が嬉しい反面、さみしさも感じるようになりますね。そんな時、親子で寄り添って肌のぬくもり、息遣いを感じながら絵本を楽しむ時間は、子どもだけではなく親にとっても癒しの時間になるでしょう。何冊も「読んで」と持ってこられて、「えー、こんなに⁉」、「今、時間がないのに」と思ってしまっても、できるだけ時間を作って、絵本を読んであげてください。忙しくても絵本を読んでくれた、という思い出は、この先のお子さんの心をずっと支えてくれるでしょう。
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