ハムエッグーすてきなふたりの関係
『とっときのとっかえっこ』
この言葉を聞いて、すぐに意味がわかるでしょうか?
私は、あまりピンときませんでした。
まず「とっとき?取り置き?」と思い、次に「とっかえっこ?とりかえっこってこと?」と思い、それなら、「プレゼントかなにかを交換するってこと?」と思いました。
このお話をご存知の方は、「ぜんぜん違うよ!」と思われるでしょうか、それとも少しおまけして「半分はあたってるけど」と笑ってくださるでしょうか。
『とっときのとっかえっこ』の原題は『A Special Trade』。
直訳するなら、「特別な交換」でしょうか。つまり、「とっとき」とは「とっておき」のことなんですね。では、その“とっておきのとりかえっこ”がなにかというと…。
お隣に住んでいる、バーソロミューとネリー。バーソロミューはおじいさん、ネリーは小さな女の子。ネリーが赤ちゃんのときは、バーソロミューが、ネリーをカートに乗せてお散歩へ。仲が良く、いつも一緒にいるふたりを、近所の人は「ハムエッグ」とよんだ。ネリーは成長し、しだいにできることが増えていくけれど、バーソロミューは歳をとっていき、しだいにできないことが増えていく。
そんなある日、バーソロミューは、けがをして、車椅子に乗ることになり、「これでさんぽはおしまいだな」と沈んだ顔でぽつり。「そんなことないよ」「わたしがつれていってあげるもん」とネリーがいい、今度は、ネリーが、バーソロミューの車椅子を押して、お散歩へ。“とっときのとっかえっこ”により、バーソロミューの顔にも笑顔が…。
当たり前のように、助け合い、支え合っているふたり。寄り添う姿に胸があつくなります。
歳が離れていても、お互いに思いやりと敬意をもっていれば、ハムエッグのように、いつも一緒にいられるんですね。
ちなみに、「ハムエッグ(原書では、Ham and eggs)」という言葉に、慣用句的な意味合いがあるのかと調べたのですが、わかりませんでした。もし、こういう意味があるんですよ、とわかる方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。
そして、『A Special Trade』を『とっときのとっかえっこ』と訳されたのは、谷川俊太郎さんです。この絵本を読んだあとだと、この絵本の題名は、『とっときのとっかえっこ』しかない、と思わせてくれます。
バーソロミューとネリーのような、すてきな“とっときのとっかえっこ”ができる人でありたいし、それが当たり前の行為になるような社会であってほしい、と思います。
この絵本の原題が『The Special Trade』ではなく、『A Special Trade』であるのも、きっと同じ思いからではないかと、勝手ながらに思うのです。
(担当:S)
『とっときのとっかえっこ』
ぶん サリー・ウィットマン
え カレン・ガンダーシーマー
やく 谷川俊太郎
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