祈りの丘絵本美術館ブログINORI-NO-OKA Picture Book Museum BLOG

山おとこのてぶくろ

 

童話館書店の日本の昔話コーナーをみていると

まだまだ知らない話がたくさんあることに気づかされます。

このお話もここで読んではじめて知りました。

 

山おとこのてぶくろ / 松谷みよ子文 / 田島征三絵 / ほるぷ出版

 

あるところにとうさんとかあさんと三人のむすめが暮らしていました。

 

とうさんがあくびをした時、突然山おとこがあらわれてこう言います。

「いま あくびをしたのは だれだあ。むすめ ひとり もらわねばなんね。」

 

すごく勝手で、横暴なやり口!

しかし人を喰うようなおそろしい山おとこですから

言う通りにしないと何をされるかわかりません。

 

仕方なくとうさんは、うえのむすめ・お月をやりました。

しかし山おとこは、お月が自分の嫁にふさわしいかどうか

見極めるためにあることを言いつけます。

 

おおきなてぶくろを、自分が帰ってくるまでにのみこめ。

二つのへやの鍵をわたすが、ぜったいに開けるな。

更に約束したことを守らねば殺す。とまで!

 

しかしお月は言いつけをきかず、帰ってきた山おとこには

ちゃんと約束を守ったと嘘をいいます。

 

すぐに嘘だとわかり怒った山おとこはお月を鍋でぐらぐら煮ると、

真ん中のむすめ・お星をもらい、同じ言いつけと約束をして、

守らねば殺す。と言います。

しかしお星もまた、言いつけと約束を破ってしまい…。

 

さあ残ったのは末のむすめ・お花。

お花は言いつけを守り、嘘もつきませんでした。

 

山おとこはぽろぽろ泣いて、

嘘をつかない娘がほしかった。とお花を嫁にすることに決めます。

 

しかし結末は、美女と野獣のようにうまくはいきません。

自分の欲望のために非道なことを繰り返した山おとこは

しっかりと成敗されます。

いっぽう言いつけを守り、嘘もつかなかったお花にはちゃんと幸せが待っています。

 

 

お話はここで終わりますが、殺された山おとこを思うと、

山おとこなりの事情なんかを考えたりして、なんとも言えない物哀しさが残ります。

 

松谷みよ子さんがこの話をしり、田島征三さんに絵を依頼して形にしてくれたのにはそんな、山おとこへの悲哀が抜けなかったからじゃないでしょうか…

 

終わりのページの、松谷さんの一文と田島さんの描いたお花の表情で一気にこの話が忘れられないものになったMでした。