太陽に感謝する日ー夏至6月21日
6月21日は夏至。北半球において、1年でいちばん昼の時間が長い日です。本格的な夏の到来、どんどん気温が上がってくる時期ですね。日本では、田植えなどが始まる農作業の繁忙期にあたるので、“夏至ならでは”の風習というのは、あまり定着しなかったようですが、ヨーロッパでは、「夏至」はとても大切にされていて、「夏至まつり」を盛大に開催する国もたくさんあります。特にスウェーデンでは、「夏至」は最も大切な日とされているそうです。
今回ご紹介する絵本は、そのスウェーデン生まれのエルサ・ベスコフ作、『リーサの庭の花まつり』です。
リーサは、森のはずれの小さな家で、おばあちゃんとふたりで暮らしています。夏至まつりの前日、野原で遊んでいるリーサの前に現れたのは夏至の精でした。夏至の精が、リーサのまぶたにしずくをたらすと、見えてきたのは、草花たちによる花まつり。きんぽうげの親子や野菜たちは準備に大忙し、草原や森からは、たくさんの草花たちのお客さまが行列をなし、ばらの女王のまわりには、夫人たちや娘たち、男爵や騎士が集い、なんとも華やかな宴です。
この絵本を手にする人は皆、まずそのイラストの美しさにひきこまれることでしょう。紙面をいろどっているのは、それぞれの個性を存分にいかして擬人化された草花たち。まるで、画集のようです。とおして読むと40分ほどかかりますが、上質なファンタジーの力で、飽きることなく、しぜんとリーサの目で花まつりを見ているような、ふしぎで楽しい気持ちになれるでしょう。
作者のエルサ・ベスコフは、小さいころから野や林のなかで、草花や生きものたちを見つめて育ちました。熱心に観察することで、しぜんと知識を得、そこでとらえたその本質や、大人になっても忘れることがなかったみずみずしい感性が、作品に色濃く現れています。
私が小さいころは、今よりもっと、草花や土にふれられる場所があり、ひとりそこで、何時間も時間を過ごすことができました。草をたたいてでてくる汁のにおい、服にくっつく種の手ざわり、根っこの断面の白い色、遠くで鳴くとんびの声、足元のダンゴムシ、そして、そこでくりひろげられる物語…。子ども時代には見ることができた、現実世界のなかにある自分だけの世界を、この絵本をとおして、久しぶりに思いだすことができました。
奥付を見てみると、110年前に出版された絵本であることがわかります。ヨーロッパから、時も場所も超えて私たちのところにやってきてくれた1冊。大人の方にもおすすめです。
(担当:I)
『リーサの庭の花まつり』
作・絵 エルサ・ベスコフ
訳 石井 登志子
童話館出版▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいみかんコース」(およそ7~8才)
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