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数多の成功と失敗と -冒険家の日 8月30日-


冒険家の日

 

今日は「冒険家の日」です。
8月30日が冒険家の日?なぜ?と調べてみると…、ふたつの偉業がこの日に成し遂げられたこと、からだそうです。
まずひとつめは、1965年8月30日、同志社大学の南米アンデス・アマゾン遠征隊がアマゾン川の源流から、ゴムボートで130㎞もの距離を下ることに成功。
ふたつめは、1989年8月30日、海洋冒険家の堀江謙一が、世界最小の小型ヨット「ミニマーメイド号(全長2.8m!)」で太平洋単独横断(サンフランシスコ~西宮間)に成功。
なんともふしぎな偶然です。
 
 そんなロマンあふれる日に、ご紹介するのは、『エンデュアランス号大漂流』です。

エンデュアランス

1914年、イギリスの冒険家、アーネスト・シャクルトン率いる28人の探検隊が、エンデュアランス(不屈の精神)という名の船で出航し、南極大陸初横断を目指した実話です。
シャクルトンの計画は、南極大陸のウェッデル海海岸に上陸し、そこから南極点を通り、大陸の反対側の海岸を徒歩で目指すという、それまで誰も成しえていない壮大なものでした。しかし、エンデュアランス号は、南極大陸を目前にして、流氷に行く手を阻まれ、氷の海に閉じ込められてしまいます。計画の続行は不可能となったうえ、1915年11月、エンデュアランス号はついに沈没…。雪と氷だけの、嵐が吹きすさぶ極寒の地で、探検隊28人の”生きるため”の壮絶な日々を過ごすことになったのです。

この本では、探検隊のリーダーであった、シャクルトンの生い立ちからエンデュアランス号出航、1916年の隊員救出までのようすが克明に描かれています。

 

探検隊を次々に襲う自然の猛威と絶望的な状況に、読者はともに嘆いたり、希望を失わずに一歩一歩生還へ向けて前に進むシャクルトンとチームのメンバーを「がんばれ…」と応援したり…、あっというまにその世界へ引きこまれることでしょう。そして、添えられた写真の数々が、この物語が実話であることをより一層実感させてくれます。
シャクルトンの「南極大陸横断」は、当初の計画を成し遂げることはできませんでした。この物語はいわば”失敗の記録”だと、本のなかにも書かれています。けれど、シャクルトンたちが”全員で生きて帰る”という目的のために過ごした日々は、成功の記録よりも私たちの心を揺さぶるものになっているのではないかと思います。

シャクルトンは、幼いころから、本をとおして冒険への憧れをつのらせていったそうです。そして、シャクルトンが果たせなかった「南極大陸横断」に成功したのは、エベレスト山に最初にのぼったことで知られるエドモンド・ヒラリーでした。だれかの冒険が本になったり、語り継がれたりすることで、それが次のだれかの冒険へとつながり…、冒険家たちの夢は尽きることがないのですね。『エンデュアランス号大漂流』を読んだ子どもが「自分も冒険家になりたい!」と言ってきたら、それはそれで「ちょっと待って…」と私は言ってしまいそうな気もしますが、シャクルトンたちの冒険は、人生という大冒険に挑んでいる子どもたちへ、大きな励ましと、生きる活力を与えてくれると思います。最近冒険してないな…と感じている大人の方たちも、ぜひ手に取ってみてください。
 
そして昨年、「エンデュアランス号」をめぐり、大きなニュースがありました。
どこに沈んでいるのか、長いあいだ”謎”とされ、いくつものチームが探索に挑むものの発見することができなかった「エンデュアランス号」が、沈没から107年という時を経た、2022年3月5日、ついに発見されたのです!
南極大陸に接するウェッデル海の海底、水深3,000mに沈んでいたエンデュアランス号は、約100年前に沈んだとは思えない、まるで昨日沈んだかのようなきれいな状態で残っています。研究者によると、エンデュアランス号を沈めた南極の海の厳しさが、この良好な保存状態を生んだとのこと。なんという皮肉なのでしょう。エンデュアランス号は、南極条約下で、歴史的な史跡、記念碑として保護されており、回収はもちろん触れることさえできないのだそうです。これから先も、冷たい南極の海底で眠り続けるエンデュアランス号。ここからまた、新たな冒険が生まれそうです。

(担当:G)

 


エンデュアランス『エンデュアランス号大漂流』

 著 エリザベス・コーディー・キメル
 訳 千葉茂樹 
 あすなろ書房

「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース  ▶「大きいぺんぎんコース」(およそ12~13才)

 

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