猫と人と本 -猫と人の日 11月28日
皆さんは猫はお好きですか。
11月28日は「猫と人の日」という記念日です。
猫と人の日は「11(いい)28(にゃ)」の語呂合わせから、2020年に日本記念日協会に登録された比較的新しい記念日です。
猫に感謝したり愛でたり、はたまた猫気分で1日過ごしてみたり。そんなふわりとゆるく猫を想う記念日が、実に猫らしいですね。ぜひ今日は、猫がお好きな方もそうでない方もほんの少しだけ猫たちのことを想ってみてはいかがでしょうか。
さて、かく言う私は縁あって保護猫2匹と暮らしています。
個性豊かな猫たちは、慌ただしい日々の一瞬をより彩り豊かにしてくれる大切な存在です。ときにはとんでもないいたずらをして、私の肝を冷やすこともありますが、そんなものを吹き飛ばすくらいに愛情深い2匹に救われることのほうが多いかもしれません。
それは例えば、すっきりと晴れた青空のなか、2匹とともにしばらく外を眺めるときの穏やかさだったり、寒い冬の日の朝、布団のなかで感じる猫たちの体温の温かさだったり…。日常の小さな、しかし見落としがちな幸せをすくいあげてくれるから不思議です。
そんなふうに猫が人と寄り添う生きものだからでしょうか。昔から“作家”と呼ばれる人たちの側には多く猫たちがいました。自由気ままで自分の好きなときに甘える猫たちは、何かを生みだす作家たちにとって、よき息ぬき相手だったのかもしれません。
「こぶたくん」シリーズや「がまくんとかえるくん」シリーズでおなじみのアーノルド・ローベルも、大の猫好きで知られる1人です。彼は後に自身の愛猫へ向けた詩集をだすほどの愛猫家だったそうで、その様子からも生きものへの愛情が深く伝わってきます。ユーモアとやさしさがあふれる彼の作品のなかには、そんな猫たちとの交流もエッセンスとして加わっているのかもしれませんね。
ほかには、児童文学作家であり翻訳者でもあった石井桃子さんも猫たちと暮らした1人でしたが、なんと彼女は元は猫が苦手だったそうです。しかし、とある猫がきっかけとなって生涯2匹の猫と生活をともにし、その後随筆集などでも度々登場させていました。生活のなかに溶け込んだ猫たちとの日々から生まれた『ちいさなねこ』は、そんな彼女がふれた母猫の強さと子猫の関係を描いています。母さん猫の表情や子猫の突発的に行動する姿が本当に生き生きとしていて、“猫”という生きものを私たちによく伝えてくれるとともに、母の強さと愛情深さを深く感じさせてくれる1冊です。
絵本、特に小さい人たち向けの物語には犬よりも猫のほうが多く登場します。
それはひとえに、古くから猫はねずみをとってくれるハンターとしての役目があったこと、そのうえで身近に感じる子育て上手な一面が垣間見えるからこそというのもあるのでしょうが、果たしてそれだけだったのでしょうか。私はやはり、そこには「猫が好き」という明確な作家たちの愛情が存在しているから、と思わずにはいられません。
愛すべき隣人であり、人生の師匠のような存在の生きものたちに敬意を払いつつ、そのかわいさを知ってもらいたい。そんな思いがこうして多くの人たちの心を響かせているのではないでしょうか。
「11ぴきのねこ」たちのユーモアあふれる姿にクスリとしたり、「ルドルフ」の勇敢さに心が踊ったり。はたまた「オーランドー」の家族愛と賢さに目を奪われたり…。個性豊かな猫たちは今日も読む人々の心を縦横無尽に駆け回っていることでしょう。
最後に、たくさんある猫と人とのお話のなかからひとつ、ご紹介します。
今年度のリストより仲間入りした『ブックキャット ネコのないしょの仕事!』は、第二次世界大戦時のイギリス ロンドンを舞台にした、黒猫 モーガンのお話です。
戦争禍のなかで母猫と妹を亡くし、ふとしたことがきっかけで出版社に住み着くことになったモーガン。彼にはネズミから紙を守る仕事のほかにも大切な仕事がありました。それは…。
モーガンが紡ぐ人と猫との物語は一体どんなお話でしょうか。
読みものですが、挿絵もたっぷりとはいっていて読みやすいお話です。ぜひ一度お楽しみください。たくさんの作家と猫たちが出迎えてくれます。
(担当:K)
『ブックキャット ネコのないしょの仕事!』
ポリー・フェイバー/作
クララ・ヴリアミー/絵
長友恵子/訳
徳間書店
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「大きいみかんコース」(およそ8~9才)
この記事をシェアする