巳年もどうぞよろしくお願いいたします
2025年は巳年ですね。ヘビは苦手、怖い、という方もいらっしゃるでしょう。
けれど、縄文時代においてヘビは、信仰の対象でした。脱皮をくり返しながら大きくなることや、数日食べなくても生きていけることなどから、「復活と再生」の象徴として崇められていたようです。平均寿命が30才ぐらいだったといわれる縄文人たちが、ヘビの姿に長寿の願いを託したのでしょう。時代の変遷とともに人の寿命が延びていくと、しだいにヘビに対して畏怖の念だけではなく嫌悪も抱くようになっていったようです。そして、蛇神信仰は少しずつ廃れていきましたが、現在でも本来の姿がヘビとされる神が多く存在しています。初詣などのお参りに行かれたら、祭神について調べてみてはいかがでしょうか。
さて、そんなふうに私たち人間に畏怖の念を抱かせるヘビは、物語や神話などでは、狡猾や欺瞞、誘惑、悪など負のイメージで登場することが多いようです(もちろん白蛇など神の御使い的存在もいます)。日本での悪いヘビ代表格といえば、やはり「八岐大蛇」でしょうか。そこで今年は、日本の神話にでてくる「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」のお話から始めたいと思います。
古事記でも日本書紀でも、「八岐大蛇」が登場する物語は、スサノオノミコトが出雲の国に降り立ったところから始まります。
高天原を追放されたスサノオノミコトが出雲の国に降り立つと、川上から泣き声が聞こえてきました。そこで、スサノオノミコトが川上に歩いていくと、老夫婦と若いキレイな娘が泣いています。事情を聞くと、「この地方には、8つの頭と8つの尾をもつ大蛇がいて、毎年娘が1人、その大蛇 八岐大蛇に食べられている。私たちには8人の娘がいたが、とうとう、最後の1人になってしまった。その最後の1人であるクシナダヒメ(クシイナダヒメとも)も、もうじき八岐大蛇に食べられてしまうのだ」と言います。そこで、スサノオノミコトはクシナダヒメを妻にすることを条件に八岐大蛇退治にのりだします。スサノオノミコトはとても強いお酒をつくり、八岐大蛇が酒を飲むようにしむけます。思惑どおりに酒を飲んで八岐大蛇が眠ってしまうと、スサノオノミコトは剣を手にして、八岐大蛇を倒したのでした。
無事にクシナダヒメを妻に迎えることができたスサノオノミコトが喜び詠んだ歌が、日本初の短歌といわれる
「八雲立つ 出雲八重垣妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」
です。意味はぜひ調べてみてくださいね。
ちなみに、倒れた八岐大蛇の尾からでてきた、みごとな一振りの剣が、三種の神器のひとつ、天叢雲剣(草薙剣)です。
八岐大蛇の正体には諸説あり、氾濫をくり返す川(水害)を象徴しているという説、もともと出雲地方にいた8つの部族の長という説、高志国(越国:北陸地方をさす)からの侵略者という説、などがあります。八岐大蛇の立場により、スサノオノミコトの立場も変わります。果たしてスサノオノミコトは英雄なのか、侵略者なのか、優秀な治水工事者なのか、それとも別の何者なのか…。あなたはどう思うでしょうか。
物語や神話のなかだけではなく、多面的な人間はどの立場でその人を見るかによって、善にも悪にもなり得ます。だからこそ、その人の本質を見極める「目」が大切なのでしょう。たくさんの物語にふれ、人にふれ、「本質を見る目」を養っていきたいですね。
この記事をシェアする