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シリーズ〈今月の1冊〉- 2025年6月『あかいくるまのついたはこ』


今月の1冊

 

さわやかな5月が終わり、今年も雨の多い季節となりました。天気と同じで気持ちもなんとなく晴れない…そんなときに、心をほぐしてくれる絵本はどうですか?
そんな気持ちで選んでみた今月の1冊が、『あかいくるまのついたはこ』(「大きいいちごコース」およそ23才)です。

 

のんびりおだやかに進むお話とともに、赤を基調としたモウドとミスカ・ピーターシャムのやわらかいタッチの絵が、なんとも愛らしくて、動物たちの内面を豊かに描きだしている作品です。動物1ぴき1ぴきの表情やしぐさを追いかけて見るもの楽しくて、おすすめです。

 

表紙の絵をじっくり見れば、「あかいくるま」がついた「はこ」のなかにはいっていたのは何か、大人はわかってしまうものですが、初めて読んでもらう子どもは気づかないようで、「はこ」のなかに興味津々! 

物語は動物たちの目線で始まります。
庭の木の下に「あかいくるま」のついたみょうな「はこ」を発見した動物たち。庭の木戸があけっぱなしだったため、めうし、こうま、うさぎ、かもやこねこは、ぞろぞろと「はこ」を目指して進んでいきます。最初にたどり着いたのはめうしです。1ぴきずつおぎょうぎよく、「はこ」をのぞきます。でもやわらかい布がかかっていて、何がはいっているのかわかりません。
そんななか、ただ1ぴきだけ、中身を知っているこいぬが駆けてきて…。

 

それにしても、小さな子どもたちは、動物が登場するお話が大好きですね。読み聞かせながら、動物たちの鳴き声をまねしたりと、楽しく愛おしい時間を過ごすことができ、わが家でも、何度も読み聞かせをした絵本のひとつです。
そして、何度も読み聞かせをした理由がもうひとつ。この絵本は私が子育てをしていく上でだいじなことに気づかせてくれた1冊なのです。

 

この絵本が届いたのは、娘がまだ2才になりたてのころ。初めての子育てに奮闘し、いろんなことに一喜一憂していました。いろんな人からのアドバイスや体験談などに助けられながらも、「規則正しく生活しなくちゃ!」「栄養を考えて元気な身体にしなくちゃ…」など、とにかく「私がちゃんとしなくては!」と、今思えば、自分で自分をいろんな鎖で縛りつけていたような気がします。まさにそんなときに届いた絵本でした。

物語の終盤、動物たちに囲まれた赤ちゃんを見たお母さんが大急ぎで飛びだしてきます。そして動物たちを追いだして木戸をしっかりと閉めてしまいます。この場面を読んだとき、胸がドキンとしたのを覚えています。そして「なんだか私みたい・・・」とも思いました。

いろんな不安から子どもを守ろうと、子どもを自分の手で囲んで、必死で守っている。でも…でもその守り方でいいのかな? 私は自分のそんな気持ちばかりで、子どもやまわりの人たちの気持ちに気づけているのかな? この場面を読んで以降、そんなことをふり返るようになりました。そして、「この子のまわりにはいろんな世界があって、この子を育てていくのは私だけじゃないんだな」とも。

それから、この絵本は私の子育てのお守りのような存在になりました。

こうして、絵本は子どもだけではなく、親にも恵みを与えてくれる…改めてそんなことに気づかせてくれただいじな1冊です。

(担当:A)

 


 『あかいくるまのついたはこ』

 モウドとミスカ・ピーターシャム/作・絵
 渡辺 茂男/訳
 童話館出版 ▶詳しくみる

 「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース  ▶「大きいいちごコース」(およそ2~3才)

 

 

 

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