アーノルド・ローベルが挿絵を手がけた絵本‐『こぶたくん』シリーズ
前回、「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展」へ、で『がまくんとかえるくん』について簡単にご紹介しました。
今回は、アーノルド・ローベルが挿絵を手がけた絵本『こぶたくん』と『しりたがりやのこぶたくん』をご紹介します。
この2冊は、とうさんとかあさん、妹のアマンダと暮らす、こぶたくん(オリバー)の「なにげない日常」を描いた、絵本です。
『こぶたくん』と『しりたがりやのこぶたくん』ともに、それぞれ5編のお話が収録されています。
「おかしを やく日」 (『こぶたくん』第1話)
雨の日に、外に遊びに行きたい、というこぶたくんに、雨が降っていて寒いから外はだめ、というかあさんは、そのあと、「だいどころへ いらっしゃいな」「きょうは おかしを やく日だから」と続けます。
そこで、台所に移動し、クッキーをつくることに。小麦粉をこぼしながらもいっしょうけんめいお手伝いするこぶたくんと、小麦粉まみれになってしまうアマンダ。ふたりを見守りながら、クッキーをつくるかあさん。
できあがったクッキーをオーブンに入れ、焼きあがるまで、なにもしないで雨の音を聞いていたこぶたくんが、ひとこと。
「ぼく、いま しあわせ」
かあさんやアマンダがそばにいてくれるからしあわせ、という、こぶたくんの素直な言葉に、ハッとさせられます。
時間に追われて生活していると、“大切な人といっしょにいるからしあわせ”という、あたりまえのことを忘れてしまいがちで、“しあわせ”を感じることにも、心が鈍くなっていることに気づかされます。
そんな硬くなった心を、こぶたくんの言葉が解きほぐしてくれるようです。
ときには、ひと息ついて、こぶたくんたちと同じように、雨の日にクッキーをつくり、焼きあがるまでの時間、雨音に耳を傾けてみるのもいいですね。
「かぼちゃ」 (『しりたがりやのこぶたくん』第1話)
畑をつくり、種をまいて、野菜を育てるこぶたくんととうさん。
一粒落ちていた種を、「こぶたくんの種」として、育てることに。
「これ、なんのたねだろ」というこぶたくんに、「まってりゃ、そのうちわかる」と、とうさん。
こぶたくんが、早く育ってほしい、とかいがいしくお世話をして、やっと待ちに待った収穫の日。大きく育った“ペポかぼちゃ”を家族みんなで食べて、こぶたくんが育てたからおいしくなった、と、とうさんが褒めてくれます。
日本ではあまり馴染みがない、ペポかぼちゃ。
調べてみると、ペポかぼちゃは、「おもちゃかぼちゃ」ともよばれる、小さくてかわいい形や鮮やかな色が特徴のかぼちゃ、だそうです。ハロウィンの飾りに使われるのも、ペポかぼちゃが多いようです。
日本との文化の違いにも触れられるこのお話ですが、大切にお世話をした野菜が育つ喜びは、きっとどこでも同じでしょう。
皆さんもこぶたくんたちのように、土に触れ、野菜や花を育ててみてはいかがでしょうか。
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どのお話も、日常のなかにある、なにげない場面です。ドキドキするような展開はありませんが、しみじみと温かく、ほっとした気持ちになります。
また、ローベルの素朴で温かなイラストも、こぶたくんたちの特別ではない「なにげない日常」にあるしあわせをみごとに描き出しています。
絵本を閉じるとき、きっと、こう思うでしょう。
「ぼく、いま しあわせ」
(担当S)
『こぶたくん』
さく/ジーン・バン・ルーワン
え/アーノルド・ローベル
やく/三木 卓
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース
▶「大きいくるみコース」(およそ4~5才)
『しりたがりやのこぶたくん』
さく/ジーン・バン・ルーワン
え/アーノルド・ローベル
やく/三木 卓
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース
▶「小さいさくらんぼコース」(およそ5~6才)
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