童話館スタッフ思い出・イチオシ この1冊 第12回

11月末となり、今年も残すところあと1か月ほどとなりました。皆さんそれぞれにこの1年をふり返りはじめているころではないでしょうか。
私自身も、この1年も相変わらず、3人の子どもたちとあわただしく過ごしました。日々のことに加え、中学校に入学した長女の部活動の当番や送迎、次女の入院など、はじめてのことや思いがけないこともあり、あっというまに過ぎていった気がします。
それでも、絵本によってほっとひといきつけて、心がほっこりいやされることもあります。今回は私にとってのそんな1冊をご紹介します。
『あのこは どーこ?』(「小さいくるみコース」およそ3~4才)です。
この絵本には、ベンという男の子とお母さんの日常のひとこまが描かれています。
ある日、アップルパイをつくるのにいそがしいお母さんがベンに「手伝って」と声をかけます。ところがベンは耳をかさず、「ぼく、かくれるから、おかあさん、見つけてね」と、かくれんぼをはじめてしまいます。お母さんがアップルパイの生地をたたいたり、のばしたりしているあいだも「おかあさん、ぼくをみつけて」と…。
そしてお母さんはついに手をとめて、ベンの遊びに付き合い、「あのこは どーこ?」と声をかけ、ベンがはしゃぎながらでてくる…というやりとりが始まります。
あきらかにかくれている場所がバレバレなのに楽しそうに何度もかくれるベンの生き生きとした表情から、子どもたちの無邪気さやかわいらしさを感じることができます。
この絵本は、わが家でも長男がお気に入りの1冊で、何度も何度も読み聞かせをした思い出の絵本です。
「あのこは どーこ?」「みつかった!」というせりふを、親子一緒に声にだして読んでみたり、「ベンはどこかなー」と指をさしながら探してみたり、絵本のなかのアップルパイを食べるまねをしてみたり、とにかくいろんな楽しみ方をしました。
実際にかんれんぼをするときにも、ベンとお母さんのせりふをまねしたり、ベンと同じような場所にかくれてみたり、絵本と生活がつながってさらに楽しい大活躍の1冊でした。
そしてまた、ベンの子どもらしいかわいらしさと、ベンに付き合って楽しむおおからかなお母さんのようすに、温かい気持ちになり、いやされる1冊でした。
今でも「子どものことを怒りすぎてしまったな」「後回しにしてしまったな」と親として落ちこんでしまったときには、子どもと一緒にこの絵本を読み返しながら、ベンとお母さんに元気をもらっています。
そして、もうすぐ3才になる次女にも、そろそろ読んであげようかな、どんな反応をするかな、と楽しみにしているところでもあります。
これからあわただしい時期になりますが、ぜひ皆さんも「ベンとお母さんのやりとり」にいやされてみてはいかがでしょうか!
(担当:Y)
『あのこは どーこ?』
マリサビーナ・ルッソ/作・絵
ほしかわ なつこ/訳
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「小さいくるみコース」(およそ3~4才)
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