童話館編集部スタッフ思い出・イチオシ この1冊 第3回
「おかあさん! ほら すごいねー!見て!見て!」
「わあ、かっこいい!」
かれこれ15年前のできごとですが、幼かった娘の、歓喜の声と、目を丸くしてこちらを見つめる表情が忘れられない、思い出の1冊です。
そう。この絵本が「童話館ぶっくくらぶ」から届いたのは、娘が小学校に上がる少し前。読んであげるたびに、こんなふうに感動を伝えてくれていたのをよく覚えています。
長崎では、除雪車はけっして身近なものではありません。
特別、乗り物に興味があるタイプの子でもありませんでした。
にもかかわらず、わずか4、5才の子どもが、物語りに没頭し、除雪車“けいてぃー”の、
自らの役割をこつこつと果たし、がんばっている姿に、
みんなに頼られ、信頼され、愛されている姿に、
目を輝かせて、心動かされている…。
そういう姿を目にして、改めて絵本の力に気づかされることになった作品です。
その後も、「おいしゃさんごっこ」をすれば必ず、
「びょういんに つれていかなければなりません」
とハキハキと答えてくれ、お店やさんごっこをすれば必ず、
「だいじな しごとを ぜんぶ すませて、はじめて うちへ かえりました」
「すこし くたびれていました。けれども しごとを とちゅうで やめたりなんか、けっして しません」
と、大きな声で得意げに答えてくれる、たくさんの思い出と遊びをもたらしてくれた1冊でもあります。
さて、そんな娘もまもなく就職。
これからさまざまな役割と責任に対峙する場面も増えてくるでしょう。
たとえ「けいてぃー」のようにうまくはいかなくても、それでも、あのとき、目を輝かせ、憧れていたその気持ちを忘れずにいてほしいなあと願わずにいられません。
(担当:C)
『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』
バージニア・リー・バートン 文・絵
いしい ももこ 訳
福音館書店
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース
▶「大きいくるみコース」(およそ4~5才)
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