童話館スタッフ思い出・イチオシ この1冊 第18回

私には現在、小学1年生の息子と2才になった娘がいます。ふたりの育児は毎日が戦いのようで、バタバタと過ぎていく日常のなかで夜の読み聞かせの時間は、ほっとひといきつける大切なひととき。今日は、私が子育てに迷い心が折れそうになっていた時期に、そっと救ってくれた絵本をご紹介させてください。
アーノルド・ローベル作の『こぶたくん』(「大きいくるみコース」およそ4~5才)です。
初めてこの絵本を開いたのは、息子が5才のころでした。当時、下の子が生まれたばかり。息子は海の生き物や恐竜に夢中で、精神的には実年齢よりも幼く、妹ができた環境の変化からか、心がとても不安定になっている時期でした。
ある夜、本棚に読まずに眠っていた『こぶたくん』を持ってきて「今日はこれ読んで」と言ったのです。絵がメインではなく、少し長めの本のため、今の息子にはまだ早いんじゃないかな。最後まで飽きずに聞いていられないだろうな。とかってに決めこみ、私が本棚に眠らせていたのです。不安に思いながら読み始めました。
しかし私の心配をよそに、驚くほどしっかりとお話に耳を傾けてくれたのです。時には声をあげて笑い、作中の「こぶたくん」を息子の名前に変えて読むと、嬉しそうに照れ笑いを浮かべました。こぶたくんの姿が自分と重なったのか、お話の合間に「うちの家族みたいだね!」と嬉しそうにパパやママ、妹の話をしてくれることもありました。
5編のお話がはいったこの絵本をとおして、息子は初めて「しおり」の使い方を覚えました。「明日はここからね。」と言いながらはさむのですが、次の日のタイトルまで暗記してしまい、しおりがなくても「昨日の続きはね…!」目を輝かせていた姿はいとおしい思い出です。
なかでも「いもうと」というお話を読むとき、息子はとても感慨深げな表情をしていました。4才下の妹とのやりとりを5才の子どもなりにいっしょうけんめい重ね合わせていたのだと思います。読み終えたあとは、いつもより少しだけ妹にやさしく接していました。
絵本のなかのできごとをとおして、幼い心で何かを感じ、心を動かされたのでしょう。それはお兄ちゃんになろうと必死にがんばる小さな成長の瞬間でした。その姿を見たとき、育児に追われてトゲトゲしていた私の心もじんわりと温かいもので満たされていきました。私にとっても、深く胸にグッとくるお話だったのです。
正解が見えなくなる日ばかりですが、この絵本を開くとふしぎとやさしい気持ちになって、心がすーっとリセットされてきます。子どもの成長に寄り添い、親の心も包みこんでくれる『こぶたくん』。
1年生になった今も、定期的に寝る前の絵本に選んで持ってきます。
皆さんもぜひ「今夜のお話」にいかがですか。
(担当:E)
『こぶたくん』
ジーン・バン・ルーワン/作
アーノルド・ローベル/絵
三木 卓/訳
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「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「大きいくるみコース」(およそ4~5才)
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