シリーズ〈今月の1冊〉- 2025年2月『ともだちつれてよろしいですか』
春のあたたかな日差しが待ち遠しい今日この頃ですが、まだしばらくは寒さが続きそうですね。
そこで今回は、心があたたまるような絵本を今月の本のなかからご紹介します。
「大きいくるみコース(およそ4~5才)」でお届けしている『ともだちつれてよろしいですか』です。
ある日、王様とお后様が、ぼくを日曜日のお茶に招待してくれました。ぼくが、王様に「ともだちつれてよろしいですか」と尋ねると、王様は「いいとも いいとも」と歓迎してくれました。
そこで、ぼくがつれていったのは、きりん。みんなでテーブルを囲んでお茶をいただきます。
次の日も、またその次の日も、王様とお后様から招待されて、ぼくはそのたびに「ともだちつれてよろしいですか」と尋ねます。
王様とお后様は、どんなともだちも、いつも大歓迎してくれます。
このように、くり返しぼくが連れていくのが、いったいどんな友だちか、友だちを見た王様とお后様がどんな反応をするのか、そして最後はどんな結末が待っているのか、展開が楽しみな絵本です。わが家でも、子どもたちが小さいころに一緒に楽しみましたが、毎回わくわくしながら頁をめくった思い出があります。
王様とお后様は、ぼくが連れてくる友だちが、驚くほど大きくても、少し怖くても、やんちゃでも、一緒にお茶を楽しみます。絵をよく見ると、想定外の友だちに、王様とお后様が驚いたり、困り顔になったりもしているようですが、それでもやさしく受け入れます。
本当におおらかで寛容で、すてきなふたり。
会員の方からも、「すべてを受け入れる王様とお后様、もう完敗!」といった感想も寄せられます。
確かに、この絵本を子どもと読んでいると、王様とお后様の広い心と穏やかな人柄にふれて心があたたかくなります。子どもも、「ぼく」に自分を重ねてとても満足気で、読み終えた時には親子でしあわせな気持ちになれる、そんな魔法のような絵本です。
そして、もうひとつ、私がおすすめしたいポイントがあります。
みんなで過ごすお茶の時間以外に、王様とお后様がふたりで過ごす様子が描かれているのですが、ふたりで仲良く虫採りやブランコ、魚釣りなど、子どものように純粋に楽しんでいる姿が描かれていること。
王様とお后様という立場であるのに、私たちと同じことを楽しんでいるふたりを、とても身近に感じます。お話はもちろん、そういった姿も含めて、しあわせな気持ちになれます。
最後に、タイトルにもなっている「ともだちつれてよろしいですか」という言葉。くり返しでてきますが、なかなか普段は使わない言い回しですね。わが家の娘は、その当時「お上品な言葉だね」と言っていた覚えがあります。
この絵本の原題は『MAY I BRING A FRIEND?』。日本で最初に別の出版社から出版された際、渡辺茂男さんの訳により『ともだちつれてよろしいですか』というタイトルがつけられました。
小さな男の子である「ぼく」が王様とお后様に、できるだけていねいでかしこまった言葉を使っているところが、健気でかわいらしく思えてきますね。
たくさんの見どころがあるこの絵本、ぜひ手にとって読んでみてください。心もからだもきっとほかほかになりますよ。
(担当:H)
『ともだちつれて よろしいですか』
ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ/文
ベニ・モントレソール/絵
渡辺 茂男/訳
童話館出版 ▶詳しくみる
「童話館ぶっくくらぶ」での配本コース ▶「大きいくるみコース」(およそ4~5才)
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